人事担当者が聞きたい!共育Q&A【第5回】

実のところ、今の男性育休取得の状況は?

男女共に仕事と家庭を両立できる環境づくりを目指して、2021年6月に改正された「育児・介護休業法」。2022年4月から段階的に施行され、10月には「産後パパ育休(出生時育児休業)」や「育児休業の分割取得」などがスタートしました。でも実際「育児・介護休業法ってどんなもの?」「どのように取り入れたらいいの?」と悩んでいる企業も多いはず。

そこで5回にわたって、社会保険労務士の下野ななやさんに、知っておきたい基礎知識やおさえておきたいポイントを質問していきます。最終回は、実際の男性育休取得状況やよく企業から寄せられる悩み、最新情報などを聞いてみました!

オフィス・プリュス・アン
社会保険労務士 下野ななや氏


社会保険労務士の立場から、「企業における両立支援の取組」を応援する活動を中心に、大学・高校などにおいて「ワークライフバランス推進」のセミナー講師も務める。

Q.全国や岐阜県における男性の育児休業取得率は?

厚生労働省の「雇用均等基本調査」では、全国における男性の育児休業取得率は、徐々に上昇しています。しかし、80%台を推移している女性に比べれば、令和2年度で12.65%とまだまだ低いのが現状です。

岐阜県の状況を見ると、令和3年度の岐阜県健康福祉部調査による調査結果では、令和3年の男性取得率は17.1%、女性は96.9%となっています。これは、令和2年までに13%を目指していた政府目標をクリアする数値です(令和7年までの政府目標は30%)。ただし、男性の育休取得日数は7日以内が50%を超えており、より長い期間での取得が期待されます。ちなみに、岐阜県庁は令和3年における男性の育休取得率が51%と全国1位です。

男性の育児休業取得率(全国)

出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」

Q.育休ではなく年次有給休暇ではいけないの?

育休制度は、さまざまな手続きが必要で、給付もすぐにはもらえないこともあり、多くの企業では育児や学校行事のために、年次有給休暇を使用しているケースも多いと思います。基本的な目的は、育児に時間を使ってもらえる環境を整えることなので、育児休業はまだまだハードルが高いという企業は、年次有給休暇の取得率を高めたり、出産の立ち合いや子どもの誕生日などに使える特別休暇を設けたりすることから、着手するのも1つの方法だと思います。

しかし、育休制度のメリットは、長期の休みを取得して育児ができる点。長期の取得によって、今しかない新しい家族との時間を満喫したり、夫婦が協力して共働きをうまく運営するヒントを掴んだりできるのはもちろん、育児を通して時間をマネージメントし、自分の成長につなげたり、ご近所や地域との新しい交流のきっかけをつくったりと、多くのメリットがあると思います。職種によっては、子どもと接することで新商品のヒントや企画のアイディアが生まれたという事例もあり、人生経験を豊かにして仕事にも生かせる面も多くあります。「うちの会社、私たちの職種は無理」と決めつけないで、ぜひチャレンジしてほしいと思います。

Q.このほか育児休業における最新事例は?

今年10月、宮城県では県職員に対して、孫の育児をするための特別休暇を制度化する方針を発表しました。宮城県庁では、改正地方公務員法によって定年を60歳から65歳に段階的に引き上げる措置を2023年度から行うことにしており、その結果、孫を抱える職員の増加を見越して、従来の育休制度の対象を広げる姿勢です。まだ詳細は決まっていませんが、実際に導入すれば、全国で初めて孫の育児休暇を始めることになります。少子化改善のためには、夫婦はもちろん、国民総出で次代を担う子どもたちを育てていく必要があると、多くの人が認識している証かもしれません。今後もこうした動きに注目したいと思います。

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