セミナーレポート

若者向けライフデザインセミナー 岐阜大学編

2023年7月5日、岐阜大学にて若者向けライフデザインセミナーが行われました。ライフデザインとは、結婚や出産などのライフステージや仕事のキャリアアップなど、今後どのように人生を送りたいかを考えることです。学生の皆さんに、家庭と仕事を両立させながら、人生を豊かに育むヒントをつかんでもらえるよう、社員のワーク・ライフ・バランスに配慮している企業の事例、自分が抱いていた夢の実現や社会課題の解決に向けて起業した経営者の体験談などを紹介しました。

自分にとっての幸せとはなにか
本当の意味でのワーク・ライフ・バランスを考える

まず最初に登壇したのは、株式会社和愛グループ 代表取締役の若山陽一郎さん。若山さんは、ダンサーとして上京後、不用品回収業で起業し、次世代型のリサイクルショップをオープンした経験をいかし、現在、若者に夢や希望を与える講演を全国で行っています。若山さんは講演の中で、「人生はバランスが大事」と語り、「お金や仕事、健康などの目に見える豊かさと、心や友人、時間など目に見えない豊かさなど、さまざまな中で自分には何が大切で何に幸せを感じるかに気づくことが大切」と、学生たちに語りかけました。

続いて、岐阜市内で建設業を営むアース・クリエイト有限会社 代表取締役の岩田  良さんは、ライフステージごとに社員が大切にしたいことを尊重していると語りました。 「家庭を重視したい時もあれば、仕事を一生懸命したい時期もあるはず。その時々で自分の大切なものを選びながら働ける環境をつくりたい」と、業務を徹底的に細分化し、短時間しか働けない子育て世代の女性にも活躍の場を創出したり、育児や介護など家庭の事情を抱える社員には有給休暇を無制限に取得できるようにしたりと、社員に寄り添って行っている取り組みを紹介しました。

女性の就労継続、次世代を担う若者の人材育成
自らが体感した社会課題解決に向けて起業した体験を発信

大垣市でフードコンサルタントを行う株式会社コネル 代表取締役の平塚弥生さんは、食品製造メーカーに勤めている際に、大量生産・大量廃棄が行われている状況や、製菓学校で学生の7割を占める女性が、労働時間の長さから子育てと両立することができず仕事を辞めざるを得ない現状を問題視。作り手の働き方改革やフードロスの解消を目指して、店舗を持たなくても小ロットで製品を作れるシェアキッチンを立ち上げました。平塚さんは「ビジネスで課題を解決することができる」と、学生たちにエールを送りました。

最後に登壇したのは、長年、開発中の航空機を操縦して飛行試験を行うテストパイロットに従事し、アジア初の民間テストパイロットスクールを立ち上げたAeroVXR合同会社 CEOの安村佳之さん。今後、ドローン産業が大きく拡大することが予想される中、パイロットやエンジニアなど、航空宇宙産業を担う人材育成の必要性を感じ、「自身の体験を伝えたい」と退職後に起業しました。安村さんは茶道や武道における修行段階を示した「守破離」を例に出し、「教えを忠実に守り、他の良いものを取り入れて発展させる過程を経たからこそ、独自に新たなものを生み出すことができる。チャレンジに遅いことはなく、その準備が重要」と、経験を積むことの大切さを伝えました。

仕事も家庭も、夫婦でシェアしたいと考える若者が多数
一方で両立に不安も

4名の講演後、学生が抱える将来への不安などに登壇者が答えるパネルディスカッションが行われ、多くの学生が率直な意見をぶつけました。

セミナー後のアンケートでは、回答した学生の99%が「子どもをもった後、育児や家事は夫婦でシェアしたい」と思っていると回答。「夫婦2人の子どもだから、育児をどちらかに任せるものではない」「お互いに支え合って家庭を築くことが幸せだと思うから」「一緒に行うのが当たり前」など、男女差なく仕事にも家庭にも従事したいという声が聞かれました。
そのために、97%の学生が「就職を考える際は家庭と両立できる職場を選びたい」としています。一方で、「仕事と家庭の両立に不安がある」と答えた学生は、86%に上り、「男性でも育休が取得できること」「子育てと両立できる柔軟な働き方を選べること」「近隣に託児所などが充実していること」などを企業に求めていることが分かりました。

「夫婦共に子育てを楽しみたい」という思いをかなえるためにも、行政・企業・働く人が一緒に力を合わせて、まち全体で働く環境を整えることが求められています。