パパも知りたい!子育て情報【 第5回 】

5歳までに身に付けたい、注目の能力とは?

「子育てってどうしたらいいんだろう?」と悩むパパに読んでいただきたい、パパのためのウェブ版パパ大学。5回にわたって岐阜聖徳学園大学教育学部の西川正晃教授に、パパの子育てに役立つお話をお聞きします。

今回は西川先生に、今、子どもたちに身につけるべき力として注目されている「非認知能力」について聞きました!

非認知能力とは、これからの成長を支える栄養となる力

お話を聞いた岐阜聖徳学園大学教育学部の西川正晃教授

「非認知能力」は、平成29年度の学習指導要領改訂で幼児教育に取り入れられ、今注目されている能力です。これは、読み書き計算のような目に見える認知能力とは違い、興味をもって物事に向かっていく積極性やモチベーション、困難を乗り越えるための粘り強さや、多くの人を束ねるリーダーシップなど、数値などでは計れず目に見えない力を指します。

小中学校でも、アクティブラーニングという言葉が聞かれるようになりましたが、これは先生が教えることをただ聞くのではなく、子どもたちが主体的に学びへ向かっていく姿勢を大切にしたスタイルの勉強法。その原動力になるのも、興味関心を抱いて知りたいことに向かう非認知能力です。

ノーベル経済学賞を受賞したアメリカのジェームス・J・ヘッグマン氏は、幼児期に非認知能力を形成したかどうかが、大人になってからの収入や社会的地位に影響することを研究で明らかにし、「5歳までの教育が人生を決める」と結論づけています。

非認知能力をつける方法は「遊ぶこと」

こうした話をすると、「そんなに大事な能力をどうやってつければいいの?」と思われるかもしれません。しかし実は、ヘッグマン氏が研究の中で非認知能力を高めるために行ったのは、「午前中の2時間半、自発性を尊重した教育をすること」でした。つまり、簡単にいうと「自由に遊ばせる」ということです。

実は、「こうしなさい」「覚えなさい」と自分以外の人に向かわされたことからは、非認知能力は形成されません。自分がやりたいと思う遊びの中で、子どもたちは興味や関心、感覚など、いろんな能力を身につける経験を積んでいます。お友達とおままごとや砂遊びをするだけでも、数量や図形、コミュニケーション力、道徳性、自然とのかかわり方、表現力など、ありとあらゆる能力を育むことができます。こうした経験が、幼児教育の栄養になります。だから、5歳までに子どもにとって興味のあることで遊ぶことが、とても大切なのです。

非認知能力という栄養がないと、認知能力も育たない

土の中にいい栄養がたくさんあれば、木はぐんぐん成長して、きれいな花が咲き、大きな実をつけます。子どもも同じ。見えない力をつける教育は、今は見えないだけで必ず後から成果が見えてきます。小学校に入ってからは、自分で学びに向かっていく力(=非認知能力)を活かして、読み書き計算などの認知能力を獲得していかなければなりません。そのため、小学校に入るまでに非認知能力をつけていく必要があります。

お茶の水女子大学の内田伸子教授の研究によると、小学校入学前にひらがなの指導を受けた子と、自由に好きなことをさせた子を比べると、小学校入学時は前者の方が能力が高かったのですが、後者の子は入学してから「字を覚えたい」という興味や意欲を持ってぐんぐんとひらがなを習得。1年生の9月で能力は逆転したといいます。さらに、ひらがな指導を受けていた子は、その後に国語を嫌いになったという結果も出ています。

このことから、認知能力は非認知能力があってこそ、それを発揮して身に付けられるものであることが分かります。読み書き計算などの認知能力は目に見える力なので、習得することで安心感が得られるかもしれませんが、まずは見えない力=非認知能力をつけることが必要です。自然の中で泥だらけになったり、絵の具の感触を味わいながら絵を描いたりと、直接的な体験は幼児期を逃すとなかなかできません。その楽しさを大人がいかに子どもたちに伝え、楽しい体験を促すかが、非認知能力を高めるポイントになると思います。

<参考>
James J. Heckman and Dimitriy V.Masterov. "The Productivity Argument for Investing in Young Children.
『学力格差は幼児期から始まるか? ー経済格差を超える要因の検討ー』内田伸子