2022年10月7日、みんなの森 ぎふメディアコスモスで「これからの企業に求められるワーク・ダイバーシティ」セミナーが開催されました。このセミナーでは、男女ともに働きやすい職場づくりや、年齢、性別、人種などさまざまな属性の人が活躍する「ワーク・ダイバーシティ」が求められる中、企業に必要な制度や環境づくり、国や自治体が行う支援制度の情報などを紹介。当日は、ぎふし共育・女性活躍企業に認定された企業をはじめ、職場環境改善に取り組みたいと考える多くの企業が参加しました。

オフィス・プリュス・アン
社会保険労務士 下野ななや氏

社会保険労務士の立場から、「企業における両立支援の取組」を応援する活動を中心に、大学・高校などにおいて「ワークライフバランス推進」のセミナー講師も務める。

【第1部セミナー】
10月1日から施行された出生時育児休業(産後パパ育休)を解剖しよう

第1部は、そもそもワーク・ダイバーシティとはどんなことなのかという説明からスタート。ワーク・ダイバーシティは社会的マイノリティに対する差別を撤廃し、就業機会の拡大を目指すことから始まったといわれ、働きづらさ(制約)を抱える人に対して、適切な支援で就労を可能にすることで、ダイバーシティの考え方をワークにつなげるものです。

その中で、国が男性の育児参画を推奨するのは、少子高齢化による労働力の減少に対して、女性の社会進出や出生率の向上に、男性の育児参画が大きく関わっているからです。厚労省の統計では、男性が育児に関わる日数が多いほど、第2子以降の出生率が高まっているほか、女性の就労継続につながっているという結果が出ています。

もちろん男性自身の中でも「育児休業を取得したい」と思っている男性は8割を占めるといわれる中、実際は同僚にかかる負担への心配や上司の理解度、収入面などさまざまな原因によって、希望と実際の取得率とのギャップは大きいのが現実です。

しかし岐阜県では、男性の育休取得率は令和3年で17.1%と、全国平均より高い結果となっています。一方で、育休の取得日数は7日以内が50%を占め、取得率が伸びていても日数が少ないのが課題だと、下野先生は話します。

育児休業の取得率(全国)

出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」

次に下野先生は、育児休業制度の概要と10月1日に改正となった育児・介護休業法のポイントをレクチャー。従来の制度との違いや、2010年から継続されている「パパママ育休プラス」、また新たに制度化された「産後パパ育休(出生時育児休業)」について、分かりやすく紹介しました。

これらの制度については、下野先生が5回にわたって人事担当者が聞きたい質問に答える「人事担当者が聞きたい!共育Q&A」に分かりやすく解説されていますので、ぜひチェックしてみてください。

ぎふし共育都市プロジェクト公式HP ぎふし共育・女性活躍企業
http://we-hug-gifu.com/wp_wehug/#women

 

最後に下野先生は、「こうした制度改正によって一定の制度は整備されてきているが、今後は、いかに実行性のある制度として運用していけるか、が重要になる」とし、職場全体に対しては育休取得の意義や取得促進に向けた対応、育休予定者に対しては業務の引き継ぎに向けた綿密な段取りや、休業中にかかる同僚への負担を軽減する努力の大切さなどの啓発を行っていくことが大切と、参加者にアドバイスを送りました。

【第2部】ワークショップ&交流会

第2部では、参加者が自社の取り組みをワークシートに記入し、グループで取り組み状況などを共有する交流会が行われました。参加者からは

「今回、コロナ禍で業務の可視化に取り組んだことで、誰かが休んでもフォローできる仕組みができた。これを活用して、今後は育休取得にも対応したい」

「現在はギリギリの人数で業務を行っているため、育休を取得できる状況にないが、取れるにはどうしたらいいかを考えるべきだと感じた」

など、育休取得促進に前向きな意見が聞かれました。
また、育休だけでなく「育児短時間勤務を3歳までから小学校入学までに延長した」「年次有給休暇を長期で取得した人は賞与アップ」など、独自で働きやすい環境整備に取り組む企業もあり、交流会では活発な意見交換が行われました。

最後には、オブザーバーとして参加したアース・クリエイト有限会社の岩田良代表取締役社長が交流会の感想を発表。自社で行っている「義務教育終了まで有休無制限」や「男女共に育休取得率100%」などの取り組みを紹介し、「育休やテレワークなど、導入しにくい業種もあるかもしれないが、できる部分を考えて、実情に合わせた取り組みを導入することが大切」と伝えました。

それを受けて下野先生も、「テレワークや短時間勤務制度など、複数の取り組みを行うことで、働き方の選択肢が広がり、状況に合わせた働き方ができるようになる。うちの会社(業種)は無理だという思い込みは捨てて、ぜひチャレンジしてほしい」とエールを送りました。