2022年9月22日、みんなの森 ぎふメディアコスモスで、企業に向けた「学生目線で考えるリアルなワーク・ライフ・バランス」セミナーが開催されました。今回は、岐阜大学地域科学部の立石直子教授が、日本における女性活躍の現状や意義を語るとともに、学生が思い描く働き方や結婚・出産などのライフプラン、それを実現するために就職する企業にどんなことを求めているのかなどを紹介し、企業が目指すべき方向性を考えました。

岐阜大学 地域科学部教授 立石直子氏

家庭法、ジェンダー法を研究分野とし、DVや性の多様性、男女共同参画など幅広い課題に取り組む。2018年岐阜市の中学生向け男女共同参画啓発誌「大切なあなた 大切なわたし」の制作アドバイザー。

世界で見ると日本の経済における男女格差はまだまだ大きい。
多様な人材が活躍するダイバーシティ推進が必要

第1部では、まず立石教授が日本における女性活躍の現状を説明。世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダーギャップ指数2022(健康、教育、経済、政治の4つの指標で男女格差の度合いを示す)を見ると、日本は146か国中116位。中でも賃金の格差や管理職につく人の数などから算出された経済分野のスコアは121位と、政治分野の139位とともに非常に低くなっています。

一方で、女性の労働力率は確実に上がってきており、共働き世帯の数も1995年頃を境に逆転。これまで課題だった妊娠・出産後の離職も改善しつつあります。ただし日本の特徴として、近年注目を集めているのが「L字型就労」という言葉。これは、女性の正規雇用の比率を表したものです。日本では、出産を機に正規雇用を離れる女性が多く、キャリアを積んできた人材が正規雇用を離れることによる社会や企業の損失は相当大きなものだといいます。

また立石教授は、雇用における男女平等や女性活躍は、人権的な課題解決に留まらず、経済にとって大きな意義を持っていると話します。現在、日本は急速な少子高齢化により、今後は確実に人手不足になるとされています。そのための処方箋として挙げられているのが、①女性の活用、②シニアの活用、③外国人の活用、④生産性の向上です。こうしたさまざまな人材が幅広い働き方で活躍する多様性(ダイバーシティ)を推進することは、今後の企業において不可欠です。

若い世代に目を向けると、家庭生活と仕事の双方において、18~29歳の若い世代が「男女は平等」と感じる割合は、非常に高くなっています。つまり、これから企業に就職してくる若い人材は、働く負担も子育てや家事の負担も男女平等と考える人が多いということ。また、コロナ禍で家族と過ごす時間が増えたことで、テレワークや家庭への理解が進み、特に子育て世代は8割が「今後も家族と過ごす時間を維持したい」と考えている実態があります。企業は、こうした従業員に広がる意識の変化を理解し、働きやすい環境づくりに取り組むことが求められます。

大学生が就職先に望むことは?就活中の3年生からリアルな声を聞きました

就活に励む学生から相談を受けることも多いという立石教授。特に女子学生は、働き出した後のライフプランをしっかりと抱いており、仕事とライフイベントの両立について、不安を持っているといいます。そこで、当日セミナーに参加してくれた岐阜大学3年生の女子学生に、就活において感じていることや企業に求めていることを聞いてみました。

「結婚した後、自分が産休や育休を取得して仕事と育児を両立するだけでなく、パートナーも家庭生活を重視してもらいたい。そのため企業を選ぶ際には、男性の育休取得率にも注目している」

「自分の母は出産後に仕事を辞めて、子どもが成長した時にパート従業員として復帰。その後、正社員になった。そうした融通がきくのかどうかも気にしている」

「結婚する男性にも育休を取ってほしいと考えているが、企業の取得率を見ると、男性には難しいのかもしれないと感じている。育休取得によって収入が減る不安もあるので、そうした点の保障などがあるといいなと思う」

「会社説明会の際、育休の取得率や残業ゼロなどの言葉は印象に残るが、本当のところはどうなのか不安を感じる。若手社員と年配の社員からの話を聞くと、少しズレがあるように感じた」

こうした意見を聞いて、参加した企業も「学生が求めていることを聞けて参考になった」「ぜひ社内で共有したい」などの声が聞かれました。立石教授も「学生の中には『育休の促進などは大企業だけで、中小企業は違うのでは?』と思っている人も多い。岐阜市が行う認定制度などをうまく使って、自社の良さをどんどんアピールしてほしい」とエールを送りました。